京都府宇治市に位置する平等院は、ユネスコの世界遺産にも登録される古都京都を代表する名刹です。
疫病(天然痘)の流行や地震の頻発、相次ぐ合戦などによって世に不安と混乱が広がりつつあった時代、宇治川沿いにあった貴族の別荘を公卿・藤原道長が譲り受け、「末法初年」とされた1052年、息子の藤原頼通が寺院に改めたものです。現世に極楽浄土を再現するべく壮大な伽藍が整備され、その中心となる鳳凰堂には定朝作の本尊・阿弥陀如来坐像(国宝)を安置し、堂内には鮮やかな彩色による浄土図や来迎図が描かれました。
平等院では近年、創建当初の姿の復元を目指し、鳳凰堂の修理や調査研究が進められています。本展では、雲中供養菩薩像(国宝)に代表される鳳凰堂ゆかりの名品を中心に、調査の過程で発見された貴重な宝物や往時の華麗な堂宇を偲ばせる復元模写・模造、さらには養林庵書院(重要文化財)襖絵など、塔頭の浄土院に伝わる寺宝も紹介します。国風文化と浄土信仰の象徴であり、いにしえから現代までの文化と美が融合する平等院の輝きを、本展を通して感じていただければ幸いです。
会場:
新潟県立近代美術館
アクセス:
新潟県立近代美術館 公式サイト 交通案内
会期:2022年4月23日(土)~6月5日(日)
※会期中一部展示替えがあります。
(前期:~5月15日(日)/後期:5月17日(火)~)
休館日:4月25日(月)、5月16日(月)、5月23日(月)
開館時間:9:00~17:00
※観覧券の販売は16:30まで
・平等院は西暦1052年(永承7)に開創され、鳳凰堂は翌1053年(天喜元)に創建。
今年、開創から970年を迎えます。
・「鳳凰堂」は通称で、正式には「阿弥陀堂」です。鳥が翼を広げたようなお堂の形や、屋根に乗る鳳凰像からそう呼ばれるようになりました。
・鳳凰堂は、当時の童唄に「極楽いぶかしくば(疑うなら)宇治のみ寺を礼え(拝みなさい)」と唄われるように、極楽浄土の様子が拡がる空間で、その内部は極彩色の壁画・扉画・柱絵などで彩られました。
・平安時代には平等院境内に多くの堂塔がありましたが、その後の戦乱や火災などで荒廃し、創建当初の姿をそのまま伝える鳳凰堂を除き、すべて失われてしまいました。
・平等院は、当初天台宗寺門派の寺院でしたが、室町時代末期以降、現在に至るまで、塔頭(山内にある院内寺院)である最勝院(天台宗)と浄土院(浄土宗)が共同管理を行っています。
・平等院鳳凰堂は、建築自体が国宝となっているほか、阿弥陀如来坐像、雲中供養菩薩像、天蓋、胎内月輪(彫刻)、壁扉画(絵画)、鳳凰(工芸)が各部門で国宝指定されています。
・1990年(平成2)から発掘調査および庭園整備、鳳凰堂の建造物修理等が行われました。科学調査の結果、過去の修復で使われた「鉛丹」でなく「丹土」でお堂の外壁が塗り直され、創建当初の色が蘇りました。
・1994年(平成6)、ユネスコの世界文化遺産「古都京都の文化財(京都市、宇治市、大津市)」に構成遺産17件の一つとして登録されました。
プロローグ 平等院の開創
平等院は、『源氏物語』の主人公・光源氏のモデルとなった源融がかつて所有した別荘地に開創されました。
その経緯を物語る《平等院旧起》などの文書、
当初の遺構を伝える古瓦、鳳凰堂建立以前の本尊・大日如来像のものと推測される右手部分など展示し、平等院開創期に思いを馳せます。
伝土佐光則《源氏絵鑑帖》より〈橋姫〉
江戸時代(16~17世紀)
宇治市源氏物語ミュージアム蔵
※前・後期で場面替
第一部 鳳凰堂の美
現世の極楽として造られ、平安の美意識を今に伝える鳳凰堂の姿を紹介します。
あわせて創建期の様子を再現しようと後世の画家や彫刻家、工芸家らが力を尽くした復元模写・模造(飾金具・天蓋・本尊台座納入品・鳳凰堂壁扉画・堂内彩色 等)の展示を通じ、当初の鳳凰堂の壮麗な姿を思い描きます。
荒木恵信《日想観図 想定復元模写》
平成24年(2012) 平等院蔵
国宝《雲中供養菩薩像》が新潟に! 前・後期2軀ずつ展示
鳳凰堂の四方の壁に懸かる国宝《雲中供養菩薩像》(全52軀)は、堂内中央に位置する本尊・阿弥陀如来坐像(国宝)と同じく、定朝工房によって製作されたと考えられています。
極楽浄土の阿弥陀を讃えるため阿弥陀に向かって飛翔する姿、あるいは阿弥陀とともに人々を救うため来迎した姿をあらわしており、飛雲に乗り、楽器を演奏したり舞を舞ったりするなど変化に富みます。通常は堂内あるいは平等院ミュージアム「鳳翔館」で拝観できますが、今回は、普段平等院でも公開されていない4軀の国宝が寺外で公開される貴重な機会です。
左から、南14号・北1号(前期:4/23~5/15展示)
左から、北13号・南1号(後期:5/17~6/5展示)
いずれも 天喜元年(1053) 平等院蔵
第二部 祈りの心
平等院と塔頭に伝わる仏像や神像を紹介するとともに、各時代、各階級の人々が平等院に信仰を寄せ、支えてきた足跡をたどります。
『平家物語』の
鵺退治で知られ、源平の争いのなか平等院で最期を迎えた
源頼政の肖像や、明治時代に
岡倉天心の指導の下に行われた《雲中供養菩薩像》等の修理に関する貴重な資料も展示します。
大仏師の定朝の父・康尚作とも伝わる塔頭浄土院最古の仏像
宇治市指定文化財《伝帝釈天立像》
平安時代(11世紀) 浄土院蔵
室町時代の公卿・三条西実隆の自筆 平等院の来歴を記した現存最古の史料
京都府指定文化財
三条西実隆《平等院修造勧進状》(部分)
明応9年(1500) 浄土院蔵
※前後期で巻替
第三部 守り、語り継ぐ―浄土院の収蔵品を中心に
養林庵書院襖絵をはじめとする
塔頭・浄土院の収蔵品を中心に、近世以降の平等院の歩み、継続中の調査による近年の発見を紹介します。
現代未来に浄土信仰を伝えてゆく可能性の例として、現代美術家・山口晃による襖絵《
当卋来迎図》を寺外初公開します。
通常非公開、寺外での公開は22年ぶり!養林庵書院(重要文化財)二の間を飾る障壁画
宇治市指定文化財 伝狩野山雪
《籬に梅図(養林庵書院襖絵)》
江戸時代(17世紀) 浄土院蔵
蒸気機関車や京都タワーも登場!人気アーティスト・山口晃が描く現代の来迎図
山口晃《当卋来迎図》(部分)
平成24年(2012) 浄土院蔵
画像はすべて©平等院
音声ガイド
展覧会の見どころや作品の魅力をわかりやすくお伝えします。
貸出料金:お一人様1台600円(税込)
音声ガイドのナビゲーターは声優の梅原裕一郎さんです。
梅原裕一郎さんコメント
「今回の音声ガイドの収録を通して、平等院鳳凰堂が宗教の拠り所として、そして仏教の影響が薄れている現代でも文化財として、何百年にも渡って多くの人々によって守られてきた事実にとても感動しました。
これからも補修を繰り返しながら未来永劫受け継がれていくのだろうという、過去から受け継ぎ未来へ受け渡す歴史の重みを感じます。
ご覧になるみなさまにもより身近に、分かりやすくお届けできていれば幸いですが、気になった言葉を調べていただければ、より一層理解が深まるのではないでしょうか。
悠久の歴史を感じられ、知的好奇心をくすぐるような展示になっていると思いますので、是非お楽しみ下さい。」
【プロフィール】
アーツビジョン所属
「銀河英雄伝説 Die Neue These」ジークフリード・キルヒアイス役
「ディズニー ツイステッドワンダーランド」レオナ・キングスカラー役
をはじめ映画の吹き替えや、ゲーム、ラジオ、CMなど各方面で幅広く活躍中。
こちらから音声ガイドの一部をご試聴いただけます。
続きは会場でお楽しみください!
※新型コロナウイルス感染症の状況により、イベントの実施内容を変更または中止する場合がございます。
※最新の情報は新潟県立近代美術館ウェブサイトやツイッター等でご確認ください。
※申込先は全て新潟県立近代美術館となっております。
【事前申込が必要なもの】
◇講演会1「平等院 美と信仰の軌跡」
終了しました
4月23日(土) 14:00~15:30
会場:新潟県立近代美術館講堂
講師:神居文彰氏(平等院住職)
定員:先着80名 要事前申込 聴講無料
要観覧券(半券可)
◇講演会2「和様成立 ―平等院鳳凰堂の仏像―」
5月28日(土)14:00~15:30 新潟県立近代美術館講堂
講師:山本勉氏(鎌倉国宝館長、清泉女子大学名誉教授、東京国立博物館名誉館員)
定員:先着80名 要事前申込 聴講無料 要観覧券(半券可)
講演会の申込方法:電話またはメール(定員になり次第、締め切ります)
●TEL:0258-28-4111(9:00~16:00、土日も受付ます)
参加希望イベントの開催日・イベント名・氏名・電話番号をお伝えください。
●E-mail:ngt503040@pref.niigata.lg.jp
件名に「講演会 4月23日」「講演会 5月28日」のいずれかを明記してください。
メール本文に氏名・電話番号を記入してください。
近代美術館からの返信メールをもって受付完了のお知らせとなります。
◇トーク&ミニコンサート「いにしえから現代へ」
終了しました
※(公財)長岡市芸術文化振興財団 連携事業
4月28日(木)14:00開演(13:30開場)
会場:新潟県立近代美術館講堂
出演:アンサンブル・オビリー(弦楽四重奏)
解説:長嶋圭哉(新潟県立近代美術館学芸員)
ナビゲーター:TeNYアナウンサー
定員:先着80名程度 要事前申込 参加無料 要観覧券(半券可)
※未就学児入場不可
【事前申込が不要のもの】
◇学芸員による10分間ミニトーク
5月15日(日)・29日(日) 各日10:30~/11:00~/13:30~/14:00~
会場:新潟県立近代美術館 企画展示室ロビー
定員:先着10名
事前申込不要
要観覧券(半券不可)
講師:新潟県立近代美術館学芸員